米麹中の主要構成酵素で酒造に最も関係が深いと思われるα-amylase, S-amylase, Maltase, Glucoside結合分解力, Protease及び酒の色沢に関係あると思われる酸化酵素類その他の酵素について塩化A1影響の有無を実験した。 1) 塩化A1は糖化型系のS-amylase, Maltase, Glucoside結合分解力に対しては殆んど影響を与えない。 2) Protease系の中Acid及びAlkaline proteaseに対してはその濃度が高くなると僅かではあるが阻害する傾向があるが大した影響がない。 3) α-amylaseに対しては明らかに阻害する。その阻害度は塩化A1の濃度に比例して大となる。塩化A1のpH低下による影響も又A1+++そのものの影響も共に認められる。 4) 市販Diastase及びSpitaseのα-amylaseに対しても塩化A1は阻害を与える。 5) 供試酵素がcrudeで反応液にAcetic acetate bufferを使用した場合にのみ塩化A1の或濃度以上の点 (塩化A1濃度0.03~0.05%附近, 反応基質のpH4.7以降) から反対にα-amylaseに対し阻害緩和の現象がおこる。この現象は硫酸A1ではおこらない。又前述の現象は精製酵素剤の場合は塩化A1でもおこらない。 6) その原因については種々に検討したが推定の範囲を出ず明らかでない。7) Buffer soln.の濃度を極端に高めると塩化A1の酵素に対する阻害が弱められるが反応曲線の傾同には変化がない。 8) 麹又は酒の着色に関係ありと思われるCatalase, Peroxidase, Tyrosinase, Lipaseのactivityに対してA1塩は殆んど影響を与えない。 9) 塩化A1が米麹α-amylaseに対して阻害作用をする事と酒の着色を減少させることとの間には極めて密接な関係があるようである。 終りに臨み種々御指導御鞭撻を賜りました醸造試験所長山田先生, 阪大照井教授, 大阪女子短大高岡教授並に御校閲をいただきました岩大大矢助教授に対し深く感謝の意を表します。尚本実験の一部を担当された城戸良悦君に深謝します。 本報の一部は昭和31年10月27日, 日本農芸化学会東北支部講演会で発表した。