1) A1塩として塩化A1, 硫酸A1, 加里明パンの3種を選定して培地に添加し清酒酵母の増殖, 醸酵, 呼吸の各作用に対する影響をみた。 2) 酵母の増殖に対してA1塩は著るしい阻害を与えるがそれが主因はA1イオンの酵母細胞に対する生理的障害よりもむしろ間接的なessential nutrientとしての燐酸の減少が大であると認められた。添加量に対する阻害度は0.07%迄はゆるやかで, 0.1%では対照の1/2-1/4, 0.5%では完全に増殖が阻止された。 3) 醸酵作用に対しても阻害は認められるが増殖の場合程顕著ではない。0.05%以上の添加濃度でも極端な影響はなかつた。 4) 呼吸作用に対してはその影響は僅少であつた。 5) 実際の酒造では適量の範囲を越えなければ大した支障はないものと思われる。 終りに臨み御校閲を賜りました岩手大学農学部助教授大矢富二郎氏に感謝の意を表します。