1) もろみの酸量が0.18~0.21%と多くなるのは一応細菌の汚染をこうむつたと見るべきであるが, 細菌以外に生酸の原第 5 表因として野生酵母が関与する場合も多く, これを見逃すことは出来ないと思う。 2) この細菌, 野生酵母の侵入経路には, こうじ, 酵母, 水, 空中等種々あるが, 大部分は水, 空中からと思われる。 3) 水を麹エキスに培養して検討してみるに殆んどすべての水には細菌はもとより, 野生酵母が多く存在しており, 細菌は乳酸菌らしき短桿菌が多く, その他球菌, 長桿菌も認めた。野生酵母の種類は穂々雑多であつた。 4) 細菌酸度を調べたが, 一般に混濁の少ないものは, 酸度も少なく, 全然混濁しない透明なものは細菌, 野生酵母は認めなかつた。麹エキスに培養後2~3日目既に液面, 試験管の周辺に自色不透明の皮膜を形成するものは特に酸度が多く大体3ml以上である。 5) 皮膜を形成するのは酵母によるものと思われるがその形状からウイリア属, トルラ属, 或はミコデルマ属ではないかと思われる。 6) 水の細菌酸度を調べその水を仕込水に使用して, もろみの酸度を調査したところ, 細菌酸度2ml以上のものは大部分がもろみの酸量は0.15%以上を示している。細菌酸度の多い水を使用すればもろみの酸が多くなると即断することは許されないが, 大体そのような傾向はある。 7) 活性炭素で濾過した水は原水より細菌酸度が減少することは明らかであり, 炭素濾過に限らず浄化することにより微生物が除去され細菌酸度は少なくなるから, もろみに酸量の多くなる庫では水を浄化してみることが先決である。 8) 濾過層の不純から, かえつて水を不純にすることがあるから注意すべきである。