全床式製麹を行うに当りS-amylaseの増強と麹の代謝生産物を多くする目的で, 一応妥当と思われる温度経過を見い出し更にこれに附随する種々の要因も併せて検討した。 (1) 全床式麹においてその最高温度40-41℃ が種々の面で優りそれより低温, 高温でも不適であった。 (2) 酵素の産生状態から見れば床揉み後38-39時間経過 (最高積替相当) 頃の手入 (境拌) は不必要であった。 (3) S-amylaseの増強と三次的役割をもつ代謝生産物を充実する方法としては第二仕事 (仲仕事相当) までの前半を比較的高温経過に導き, 出麹時期をやや延長することによってこれが可能であり, しかも麹の手ざわりに弾力があり, 香味もよく突ハゼ型の麹を得ることが出来た。 (4) 低精米 (50%) でもこの製麹の実用性が大であった。 (5) 床の所要面積は引込高100kg当り4.0-4.5m2あれば充分であった。 (6) 全床式製麹における種々の操作, 条件等からその品温経過を設定した。 終りに臨み本研究に関し試料の提供その他等に全面的な御協力をいただいた宝峰酒造KK, 喜久盛酒造 (珠) に対し深甚なる謝意を表します。又本実験に御協力をいただいた植木正君に深謝致します。 なお本研究費は日本酒造組合中央会の研究助成金に仰いだものでここに附記して深甚なる謝意を表します。