(1) 蒸米に酵素剤Takadiastaseを作用させるとき生ずる色は各波長にわたって極めて淡く且米の精米歩留による差も少いが, 麹から生ずる色は特に可視部に於て濃く且米の精米歩留によって相当に異る。 (2) 麹菌の呼吸作用に伴って麹が褐変すると考えられるので, 呼吸力の非常に弱い麹菌Asp. oryzae0-11-9を用いて酒造を行った。麹は悪臭が強いが褐変しないし酒粗も黒粕とならない。然し清酒の色は濃く, とりわけ貯蔵中の増色が大きく, ややヌカ味を有している。 (3) 今までの試験より考えると麹菌の性質を利用して原料米の精米歩留を高めようとしても, 現在市場の清酒と較べ少くとも製成酒の色から見て80%程度の歩留の精白は必要のようである。 終りに麹菌Asp. oryzae 0-11-9を分譲いただいた東京大学応用微生物研究所飯塚広先生に感謝する。