初暖気時に既に強い亜硝酸反応を示しながらその消失が急で早湧き傾向のあった山廃酒母を調査した結果, 次の事が判明した。 1.仕込水中の硝酸還元菌数が多かった。 2.酸の生成速度が遅いために, 酸性に弱いB培地雑菌群が異常に増殖した。 3.この菌は硝酸塩を亜硝酸塩に還元しながら, 増殖につれて更に次の段階に迄還元を進めて亜硝酸を無駄に消費した。 4.水麹に乳酸菌を添加し, 酸の生成を早めてB培地雑菌群を抑制する事により, 亜硝酸反応の消失を遅らせて野生酵母群を淘汰できた。 5.添加する乳酸菌はL.sake型と推定される桿状乳酸菌単独で十分であった。 6.アミノ酸の増加は酸の増加とよく平行したが, その最大生成量は酸の増加の緩除な方が大であった。 終りに本研究は会津若松市の “金の〆” 醸造元山中酒造株式会社の酒母について行なったものである事を附記し種々御協力戴き且つ発表を快諾された山中八次郎社長, 山中栄九郎専務及び葛岡喜一郎杜氏始め現場の諸氏に深謝すると共に, 山廃酒母の試料を戴いた “名倉山”,“末広”,“天香” 及び “薫鷹” の各醸造元に感謝します。 尚試料の採取や成分つ分析ま当試験場員川井良伸, 馬場貞子及び尾崎辰雄の諸氏に負う所多く合せて感謝の意を表します。