呼吸型の麹菌と醗酵型の麹菌とを各単菌で用いて各2本ずつ合計4本の醪を造り, 製麹経過を甚だしく変えた場合の酒造経過全般に対する影響を比較した。製麹経過の影響が全くないとは言い切れないが, それよりも菌株の違いの影響の方が強く現われるもので, 酒造管理のためには菌株を一定にすることが先決である。黒粕の成因の一つとして醪経過の重要性, とりわけ醪中で麹粒が肉眼で認め得る程度の形をなして存在していることが必要であることを挙げた。同一菌株を用いた場合は製麹温度が高いと麹の褐変が強く, この場合醗酵型菌株では清酒に木香の生成することを認めた。