前報において清酒酵母のリンゴ酸一尿素一糖蜜培地を用いた振盪培養による製造について報告したが, 本報ではその酵母を用いて酒母省略仕込を行なった結果, 1) 酒母省略醪は普通仕込醪に比べ, 初期において酵母の繁殖がやや旺盛で, 成分上にも差が認めらたが, 醪中期以降はほとんど同じような経過をとり, 安全に醸造出来ることが認められた。 2) 酒母省略醪は初期にやや生酸が多く, pHが低いが, 中期以降は上り, 緩衝物質, その他の呈味成分も対照醪に劣らず生成されることが認められた。 3) アルコール収得歩合, 粕歩合等は普通仕込法と差がなく良好なことが認められた。 4) 製成酒の酒質はスベリが良く, 味に適度の幅もあり上級酒向きと考えられたが, 統計的には有意差はなかった。 終りにのぞみ, 本試験のため御助言, 御鞭燵いただいた名古屋国税局鑑定官室木村室長ほか諸先生方, 御教示いただいた株式会社山本本家下出氏, また終止御鞭燵いただき発表を御許可下さった株式会社宮崎本店社長宮崎由太郎氏の各位に深く御礼申上げます。 なお, 本報の概要は昭和40年5月13日日本醸友会中部支部主催酒造ゼミナーにて発表した。