山廃酒母の前段で増殖した球状乳酸菌と後段で増殖した桿状乳酸菌の性質を調べ, 前者が Leuconostoc mesenteroides var. sake であり, 後者が Lactobacillus sake であることを確認した。 L.sake は特殊な栄養因子を要求するが, 酒母の初期で単独でも十分増殖可能なので, 酒母初期でL.sakeが多い時にはほとんど L.sake のみで推移する。また Leuc. mesenteroides が多い時にはpHの低下が遅れるので, 硝酸還元菌が Enterobacteria であれば過度に増殖して亜硝酸が急激に消失し, Leuc. mesenteroides は L.sake に交代することがない。しかし, Pseudomonas が増殖して亜硝酸が持続すると, 亜硝酸に弱い Leuc. mesenteroides が減少し, 代って亜硝酸に強い L.sake が増殖するので, 球状乳酸菌から桿状乳酸菌への見かけ上の遷移が観察される。