前報までに, 活性炭またはアセトンを用いて抽出した清酒中の色を, シリカゲルを用いて分画する方法を検討したが, これらの画分中には, フラビンに相当する区分が存在すると推定される。 そこで今回は, 清酒中のフラビン化合物の分離, 定量法を検討した。清酒を硫安飽和後, フラビン化合物をフェノールで抽出し, 次にエーテルと水を加えてフラビン化合物を水層に転溶し, 次にフロリジルカラムに充填した。水, 0.5%ピリジンで洗った後, 25%ピリジンでフラビン化合物を溶出した。ピリジンをエーテル抽出で除いた後シリカゲルクロマトグラフィーを行なって各フラビン化合物を分離後, ルミフラビン螢光法によって定量を行ない, ペーパークロマトグラフィー・で同定を行なった。 清酒中のフラビン化合物はリボフラビン (19.6~72.6γ/l), フラビン・モノヌクレオチド (3.7~4.7γ/l), フラビン・アデニソジヌクレオチド (9.7~14.5γ/l) であった。 その他ルミフラビン, Fourth Flavin Compound (FFC), ルミクローム (Lc) が検出されたが, これらは大部分, 分離操作中に生じたものと思われる。 フラビン化合物の含量から清酒の色としてフラビン化合物の占める割合を計算した結果, 色全体の1.2~6.0%に相当した。また, 第3報に報告したピーク3は, ルミフラビン, ルミクローム, FFCの位置に, ピーク6はFR, ピーク9はFMN, ピーク10はFADの位置にそれぞれ相当する。さらに, 各ピーク中での色に対して寄与している割合はピーク6で60%, ピーク9と10で7%程度であった。