味噌熟成中のpH変動因子を解明するために熟成初期の成分変化を重点的に調べ, 併せて味噌をアミノ酸, ニーテル不溶および可溶, 抽出残渣の各区分に分け, 味噌の緩衝能成分の検討を行なった。味噌の成分分解は熟成初期において急激に進み, pHは大きく低下し, 緩衝能は5日目頃まで直線的々に大きくなってゆく。30日目味噌の緩衝能に対する各区分の寄与率はアミノ酸区分が50%で最も大きく, 次いで不溶区分が35%で, この両者が味噌の緩衝能の大部分を占める。アミノ酸区分のうち, グルタミン酸が最も大きく影響しているものと考えられる。また不溶区分の緩衝能成分は燐化合物および高分子含窒素化合物であり, 緩衝能は略同程度の強さを示す。生成乳酸は熟成後期における大きなpH低下の主因をなすが, その寄与率は小さい。味噌のpH低下の主因は緩衝能の強いアミノ酸の生成によるものであり, 特に熟成初期にその影響が大きい。また熟成の初期においては燐化合物の溶出が後期においては乳酸等の有機酸の生成が影響する。