酵母仕込が酒母仕込と異なるもろみ初期の段階におけるアミノ酸, ビタミン濃度の変化を経時的に追跡定量し, 酵母仕込初期のもろみが酵母増殖に適しているかどうか栄養的見地より検討した。 麹及び蒸米のビタミンは水麹時に急速に液中に溶出し, 必須ビタミンであるパントテン酸はこの時期にすでに充分量存在する。2次的に要求されるイノシトールももろみ初期で不足する場合もあるが酵母増殖の制限因子になるとは考え難い。 水麹および仕込時のアミノ酸含量は酵母仕込の場合きわめて少ないが, 荒櫂頃より急激に増加するので, これが酵母増殖を制限するとは断定しがたい。 酒母仕込のもろみ初期の濾液に無機塩, ビタミン, カザミノ酸を添加しても著明な増殖効果は認められず, 酵母仕込と酒母仕込とのもろみ初期の経過の相違はこれら栄養物質の不足によるものでなく, もろみの糖濃度, 酸度の影響によるものと考えられる。