1. 清酒の調熟, 劣化等の酒質変化に対して, 分子状酸素の働きが重要な役割を果しているのではないかと考えて, 両者の関係を明らかにする目的で本研究を始めた。 2. ミラー変法の清酒への適用条件を設定し, 溶存酸素dissolved oxygen (DO) の測定を行ない, また, 清酒の酸素要求量oxygen dernand (OD) の測定を行なった。なお, ミラー変法とウインクラーのショート変法との比較も試みたが両老は平行的な値を示し, 前者はより小さい値を示した。 3. 貯蔵びんの空積条件の異なった清酒を暗所に加温貯蔵したところ, 供給し得る酸素量および残存した溶存酸素量よりみて, 酸素供給量が多かったと考えられるものほど色度の増加が大きかった。 4. 青色びん, 褐色びんによるびん詰市販酒の露光貯蔵を行なったところ, 残存した溶存酸素量が少ないものほど, および透過光線量が多かったと考えられるものほど酒質変化が大きく, また, 酸素消費量と透過光線量は平行的関係を示し, 加温, 露光と酸素が酒質変化の要因になっていると推定された。 5. 新酒の生の溶存酸素量は小さく, 酸素要求量まは大きく, 火入酒はこの逆で清酒は火入により酸素の要求量が急激に減少することを示した。 6. 溶存酸素量, 酸素要求量ともに市販酒の利酒成績の上位と下位との間に明らかな差は見出されなかったが下位のものにODの大きい傾向が若干みられた。7. 清酒の溶存酸素量, 酸素要求量, 容器の空積中の酸素量等の数値よりみて, 通常の状態におけるびん詰市販酒, タンク貯蔵酒等の場合酸素の影響をさけることはむつかしいように推察された。