腐造性乳酸菌を添加した清酒もろみでは, 初期に一時滴定酸度の増加が停滞し, その後直線的に滴定酸度が増加する。このような清酒もろみの有機酸組成を経時的に調べた。 乳酸菌を添加したもろみでは初期からリソゴ酸が著しく減少している。これは添加した乳酸菌によってマロ・ラクチック発酵が起ったためと考えられ, そのために滴定酸度の増加が一時停滞するものと考えた。現在までに分離した腐造性乳酸菌うち, その大部分を占るホモ発酵型乳酸菌はいずれも強いマロ・ラクチック発酵能を有する。コハク酸は正常もろみよりやや少い傾向がみられるが, 蓄積の傾向は正常もろみと同様である。乳酸及び酢酸は著しく増加する。このようなホモ発酵型乳酸菌を添加したもろみでも酢酸の増加がみられることから, 腐造もろみ中における酢酸の成因について考察した。