浸漬時間, および蒸煮の条件を種々変化させた丸大豆の誘電率, X線回折図から大豆中に入った水の状態, ならびにこれらの水分が大豆蛋白の結晶構造に与える影響について解析した。 1. 誘電率測定結果から, 浸漬大豆中の水分は約15%(w/w) までは結合水として, また15~31%の間は準結合水として, さらにそれ以上の水分は自由水として存在する。 2. 4時間浸漬した大豆の水分 (含水率) は54%に達しており, これ以上長い時間浸漬しても誘電率はほとんど増大しない。この点から, 浸漬中大豆に入る水は一定の状態にまで達すれば平衡を保ち, 平衡状態下においては全水分の約1/2は自由水の形で存在する。 3. X線回折図形から, 大豆中の自由水は球状蛋白の準結晶の格子をくずす働き, あるいはあらたな準結晶を生ぜしめる作用を有することを推定した。 4. 蒸煮によって浸漬大豆の準結晶の状態はほとんど変化せず, 結合水, 準結合水は自由水とはちがって, 大豆蛋白の準結晶構造を保護するものと思われる。 これらの結果から, 浸漬時間の長短が蒸し豆の性状にきわめて大きな関係をもつのは, 吸水大豆中の自由水の含量によるものと推定した。