清酒の清澄に用いられている柿渋については不明の点が多いので, 実用的な見地から柿渋の品質について検討する目的で研究をはじめたが, まず本報ではタンニン含量を中心に各種成分を測定した結果を報告する。 (1) タンニンの測定法を検討した。Folin試薬により, d-カテキンとして表示する中林の方法がよいが, 酸化滴定法 (Löwenthal法) で, d-カテキンあるいはタンニン酸を標準とする定量方法も採用しうる。 (2) 各地から清酒清澄用柿渋を収集し, タンニン含量を上記の方法で測定した。これらのタンニン含量は3~6%で, ボーメ度とほぼ一致している。しかし製造者あるいは販売者の表示のボーメ度とは可成りの相違のあるものが見られた。 (3) 柿渋中には酸が多量に含有され, そのうち揮発酸が80%以上を占め, 酢酸として2~3%に達する。ペーパークロマトグラフィーによって酢酸, プロピオン酸, 酪酸, バレリアン酸などが検出された。柿渋特有の臭いはこれら揮発酸によるものと思われる。 (4) 柿渋の清酒清澄能はそのタンユン含有量に比例する。各柿渋ともにタンニン量として同一の適量を加えれば, 清酒清澄能は同一となる。 (5) 柿渋の品質の表示としては慣用のボーメ度のほかにタンニン含量をも示すのが妥当であると考える。