生の白糖をそのままで温湯と混じ, 直ちに Asp.kanachii を種麹として製麹し, 全麹にて酒母を育成し, これに生の白糠を配合して発酵させる生白糠麹・生白糠仕込法の醸造過程中の微生物相の変遷を検べた。 原料白糠中に存在する Brevibacterium, Pseudomonas, Aerobacter および Bacillus 属菌が製麹中に増殖し, 出麹で1g当り合計5×1010にも達する。また生白糠麹中には Leuconostoc を主体とする酸に弱い乳酸球菌が約106, Candida 属菌が約2×104も存在する。しかし, これらの細菌, 酵母類は酒母育成中にほとんどが死滅し, 酒母仕込の際に添加する焼酎酵母が選択的に増殖する。 つぎに, この育成酒母に生の白糠を二次, 三次と2回に分けて添加すると, 二次醪ではヘテロ型乳酸桿菌 L.betadelbruckii, L.buchneri が1.1×105も増殖し, 三次醪ではこれらヘテロ型桿菌に代って, ホモ型乳酸桿菌 L.acidophilus が2.4×105も増殖する。 この L.acidophilus は醪を酸敗させる菌株と考えられ, これが2.4×105も醪中に増殖することは醪が酸敗する危険を示している。したがって, 生白糠仕込法では麹歩合を多くするなどして, 微生物管理を充分に行なう必要のあることが強調される。