(1) 旧式焼酎原酒のクロロホルム抽出液からガスクロマトグラフおよびガスクロマトグラフ直結質量分析計により, β-フェニルエチルアルコールのほかに高級脂肪酸エステルとして, ラウリン酸, ミリスチン酸, パルミチン酸, ステアリン酸, オレイン酸およびリノール酸の各エチルエステルを同定した。またガスクロマトグラムから各脂肪酸エチルの含量を算出し, 旧式焼酎原酒中における高級脂肪酸エステルの含量の1例を示した。 (2) 旧式焼酎中の高級脂肪酸エチルは, 製造原料に含まれる脂肪酸の含有量ならびに組成に密接な相関をもつことを知った。この事実から旧式焼酎中の高級脂肪酸エチルを構成する脂肪酸は主として原料中の脂肪酸に由来するものと示唆される。 (3) 醸造工程に従って焼酎中の高級脂肪酸エチルの生成をしらべた。そして製麹中では遊離脂肪酸は造られるが, エステル生成はほとんど見られず, 一次もろみ・二次もろみと進むにつれてエステル生成が増大することを知った。 (4) 発酵もろみから固形物を分離し, 溶液のみを蒸留すると, 蒸留液中の高級脂肪酸エチルは著しく減少すること, しかもC16-C18の減少が著しいことを知った。しかしβ-フェニルエチルアルコールに関しては分離操作を行なっても蒸留液中の含量は変らなかった。