1.総米1, 8009の小仕込みによる酒母及び総米5kgの小仕込みによるもろみにつき, 酒母, もろみ中におけるKiller酵母の動向を追求した。 2.速醸酒母では, そのスタート時にKiller酵母が1/10以下の混入でないと, 酒母経過中に酵母群はKiller酵母によって占められてしまう結果であった。 3.Killer酵母汚染の予知方法の一つとして, 酒母のふくれから湧付きにかけての3日ほどの間におけるメチレンブルーによる酵母菌体の染色率を測定することにより, 染色率が10%をこえるような酒母は汚染の危険が十分認められることがわかった。 4.アソプル仕込みによる酵母仕込みでは, 初期における酵母増殖の場である水こうじのpHが低いことと高温による経過のため, Killer酵母汚染の問題に関してはきわめて安全な方法であることがわかった。 5.Killer酵母汚染防止方法の一つとして優良酵母をできるだけ早期に添加することは効果的であり, 速醸における水こうじ時に酵母を添加することの意義を再確認した。 6.もろみにおいてはKiller酵母の混入が1/100ないし1/150が限界で, これ以上Killer酵母が多くなるとそのもろみはKiller酵母により占められてしまう結果であった。 7.もろみの踊りを2日間とることは, 2日目のpHが下降することによりある程度汚染防止に効果のあることがわかった。 本実験に使用したKiller酵母, KL88はアルコール10%の存在下でKiller factor生産がきわめて抑制され, pH3.4以下ではそのKiller性を示さなかった。