(1) 消費者が清酒の級別の選択をする場合, 価格にのみ着目して選択する時の級別構成比を1因子情報路モデルを用いて計算した結果, 特級24.2%, 1級345%, 2級41.2%の級別構成比が均衡点になることがわかった。 (2) 現実の級別構成比と1因子情報路モデルとの関係をKULLBACKの判別関数を用いて比較したところ, 消費水準の低い山梨県では価格本位的な買い方からの乗離度が高く, その原因は低価格である2級酒が選択されていることによる。やや消費水準は高くなるが, 千葉県の東金, 銚子, 木更津, 館山, 佐原, 成田, 東京都区内の王子, 東京都三多摩の青梅地区も価格本位的な買い方からの乗離度が高く, その原因は中価格である1級酒の構成比が, 特級酒, 2級酒にくらべて相対的に高くなっているからであった。 その他の地区については, ほぼ同程度の乗離度を示しているが, 消費水準の向上にともない特級, 1級酒の構成比が高くなっている。 嗜好の乗離の限界曲線により, 嗜好による乗離の認められたところは, 東京都区内の神田, 麻布, 渋谷, 淀橋の4地区であり, 中でも神田が最大の乗離度を示した。 ほとんどの地区が, 嗜好の乗離による限界曲線の下に位置することから, 清酒の級別の選択に際しては, おおむね価格本位的な選択がなされており, それに消費水準による影響が加わって級別構成比がバラついているものと推察された。 なお, この結論については, 昭和49年度のデータにもとずくものであり, 時系列的な結論ではないことを, お断りしておく。