山梨県産ブドウ酒29点について酵素法によってアセトインおよび2, 3-ブタンジオールを定量した。アセトインの濃度分布は0~43.1, ブタンジオールは324~768各mg/ l で, 平均すると白酒よりも赤酒の方がやや多かった0次に16株の酵母菌株を用い, 14, 22, 30℃ の各温度でブドウ果汁を発酵させ, 生成されるアセトイン及びブタンジオールを定量した。生成量, 対糖モル比, アセトインとブタンジオールの比率のいずれも酵母菌株によって多少の相違がある。通常のブドウ酒酵母, シェリー酒酵母, 清酒酵母は比較的生成量が多く, 対糖モル比が高く, アセトインの還元活性が高いものが多いが, いわゆる野生酵母株の中には多少異るものがあり, 特に Kloeckera apiculata は生成したアセトインのごく一部しかブタンジオールに還元しない点で特異である。発酵温度が高いと生成量, 対糖モル比が増大し, アセトインの還元活性が低下する傾向があるが, この影響の大きさも酵母菌株によって相違する。ブドウ酒酵母 S.cerevisiae OC-2, シェリー酒酵母 & bayanus J-5などは比較的温度に影響されにくい酵母である。