清酒中のマンガン (Mn) および亜鉛 (Zn) を原子吸光法で測定する場合の前処理法として, 直接法,希釈法,脱アルコール法,脱アルコール希釈法 (脱希法),湿式灰化法 (湿灰法) と低温灰化法低灰法を採用し,回収率および分析精度を検討した。 Mn定量には, 3スロットバーナーを使用することにより,直接法でもけい酸の影響を或る程度除くことができた。糖やアルコールは,測定値に干渉を与えた。 直接法によってはMnは2-3%,Znは1-3%程度回収率が高くなり,Mnについては,脱希法と直接法,希釈法,添加法を,Znについては,湿灰法と直接法と希釈法を比較し各種の検定を行なったところ,簡便法としては,直接法,希釈法および標準添加法が採用できた。湿灰法では分解ビンへの吸着や抽出塩酸濃度により抽出量が異なった。低灰法ではほぼ100%の回収をみた。 原酒20点を用いた低灰法と希釈法を行ない回帰分析を行なうと,Mnではy=0.981x-0.104 (r=0.9866**),Znではy=0.983x-0,059 (r=0.9987**) の値が得られた。標準溶液及び希釈試料を用いてくり返し実験を行ない,分析精度を求めたが,いつれも精度よく測定された。