高濃度アルロール生成過程の酵母の生理的性質を調べるための実験系として, 本江らの合成培地およびそれにレシチン・アルブミンを添加した培地に遂次補糖しながら酵母を培養する方法を検討した。すなわち, 発酵中のアルコールの生成, 諸代謝産物 (グリセリン, ピルビン酸, アルデヒド, ジアセチル) の消長, および酵母数, 発酵能, 呼吸能等の経時的変化を調べ, 清酒もろみと比較することによってこれらの実験系の特徴を考察した。前者の培地では20日, 後者の培地では8日間で18%のアルコールを生成し, どちらでも高濃度アルコールの生成が可能であったが, 酵母の増殖能, 発酵能, メチレンブルー染色率等の点で, 培地間, あるいは清酒もろみとの問にかなりの差異がみられた。