前報で清酒酵末期でも死減しにくい, いわゆるアルコール耐性の強い変異株酵母 (6-4-C) で造った清酒が一般に火持性がよいことを報告した.本報ではその原因をしらべるために, 6-4-C酵母で造った醒ろ液中での火落菌の生育を協会7号酵母 (K-7) 膠のそれと比較検討した。 1.一般に酵日数の短かい膠ほど火落菌 (ホモ火落菌S-24, ヘテロ火落菌S-14) の生育が悪かった.また6-4-C酵の方がK-7醒よりも火落菌の生育が悪く, この違いはアル添後におけるS-14菌の生育において特に顕著であった。 21酵日数の短かい酵ではS-14菌の生育に必要なbiotinが不足しており, biotin (又はtween80) の添加でS-14菌の生育が認められる。但し最大生育値はthiamine, pantothenate, nicotinicacidの添加で大きくなる。6-4-C酵は膠未期でも酵母が死滅しないから, 酵母自己消化によるビタミンの溶出がなく, 醒日数の短かいK-7醒と同じ傾向を示した。 3.醒日数の短かい膠に酵母自己消化液 (Y) を添加したものは, ビタミン添加区分よりもS-14菌の最大生育値は著しく大きい。この現象はトリプトン欠田村培地へのYの添加でも認められた。これはY中に含まれるペプチド類の作用であり, Yの塩酸加水分解物 (Yh) ではこのような効果はなかった。アル添4日後のK-7醒では酵母の死滅によりYが膠中に溶出する結果, ビタミン, ペプチド類が多く, したがって火持性が悪い。 4.酵目数の短かい醒におけるS-24菌の生育はYまたはYhならびにカザミノ酸の添加で促進された。ビタミン添加の効果は認められなかった。