1. 前報における酵母無添加の山廃, 希薄山廃, 速醸の各酒母より分離した320株の酵母はすべて清酒酵母であった。 2. 本報にて使用した米こうじ中より Saccharomyces 属18株を分離同定したところ, そのうちの15株が焼酌・泡盛酵母typeであり清酒酵母typeのものはわずか3株であった。 3. 合成培地の無機成分を酒母演液の濃度に調整し, 各種醸造酵母の増殖量を検討したところ清酒酵母群が圧倒的に優位な増殖量を示した。 4. 合成培地のK濃度を500ppmとし, pHをクエン酸, 酒石酸にて下降させると, 焼酎・泡盛酵母type群の増殖量と清酒酵母typeの酵母増殖量が同一となった。 5. 前記のこうじ米を使用して酵母無添加の速醸酒母を造り, 完成時における分離酵母群を同定したところ, そのすべてが清酒酵母であった。しかしながらくみ水にKCl 1g/ l の加工を行ない, クエン酸, 酒石酸にてpHを下降させると, 酒母完成時の酵母群はすべて焼酎・泡盛酵母typeのものとなった。 6. 速醸酒母において清酒酵母と焼酎・泡盛酵母の競合を行なってみたが, 通常の速醸酒母では清酒酵母1: 焼酎・泡盛酵母20の比でも4~5日の経過で酒母はすべて清酒酵母により占められてしまうが, くみ水にKCl 1g/ l の加工を行ない, クエン酸, 酒石酸にてpHを調整することにより焼酎, 泡盛typeの酵母が優位に増殖することがわかった。