1. 清酒中のD-, L-乳酸含量をL-lactate dehydrogenaseならびにD-lactate dehydrogenaseを用いる酵素法で分別定量する方法について検討し, 回収率, 変動率とも良好であり, 清酒に十分適用できることを認めた。 2. 各種酵母の乳酸生成能を調べた結果, いずれの菌株もD-乳酸の生成量がL-乳酸のそれに比して著しく大であった。なお生成に対する有機酸, アミノ酸の影響はなかった。 3. 乳酸を多量に含む麹汁培地ならびに清酒醪の発酵でD-乳酸は増加するが, L-乳酸は逆に減少し, L-乳酸が資化されることが認められた。 4. 一般に純米酒のD/L (D-乳酸/L-乳酸) 値は増醸酒 (調味液にDL-乳酸使用) 混和の酒のD/L値よりも大きい。また山廃酒母を使用した酒は山廃中にL-乳酸が多いからD/L値は小さい。