常温貯蔵古米を各種原料処理し, また仕込方法を変えて小仕込を行い, 製成酒中の古米酒臭の生成およびジメチルスルフィド (DMS) 前駆物質量を測定した。またタイ米や加州米を用いて同様の試験を行った。 酵素剤, 酸, 塩類やその他の薬品による浸漬処理では, 顕著な効果が認められなかった。また酸処理によってDMS生成の減少がみられたが, これは米の溶解が悪いためであった。 加圧α米を用いた場合は, 対照に比べ清酒中のDMS前駆物質量が減少した。 掛米として常温古米の比率を増加させるとそれに伴い清酒中の前駆物質量が増加した。酵素剤仕込では, たん白分解酵素の量を多くするとDMS前駆物質量が増した。清酒酵母の種類を変えても前駆物質量は変化しなかった。 タイ米を用いた仕込では, DMS前駆物質含量が異常にふえたが, 低温貯蔵加州米では, DMS前駆物質は不検出であり, 貯蔵条件がDMS生成に影響をおよぼしていることを推定した。 小仕込試験の結果から, 米中のDMS前駆物質が清酒中へ移行する割合を計算した。また米中にDMS前駆物質が含まれておれば, 原料米処理や仕込方法を変えても清酒中に検出されるが, 閾値以下にすることは可能である。