清酒もろみは複雑なため, 今迄外からのみ眺められていたが, 本稿は, その中味にいどんだところに意義がある。しかもそれを, 複雑なままに取扱わず, 筆者の得意とする酵素の面からアプローチし, すっきりとした形にまとめあげている。もとより, 現実のもろみは細部において, ここに述べられた理論ではカバーしきれない点もあろう。しかし一つの大筋はこれではっきりとした。現場での清酒もろみを取扱う上で, 大きな指針を与えてくれることは間違いない。