泡盛1号酵母の保存性について日本醸造協会発売の焼酎酵母及び九州地方で広く使われている鹿児島県工試酵母を対照として3℃, 20℃, 30℃ の各温度条件で, また30℃ における耐pH性, 耐糖性及び耐アルコール性について調べ, 次の知見を得た。 (1) いずれの供試菌も保存温度が高くなるに従い, また保存日数が長くなるに従い, 生菌数が減少していくとともに, 生菌の活力も弱まっており, 賦活に時間がかかっていた。 (2) 保存日数が長くなるに従い, 再増殖させた場合の最大菌体量は低下した。 (3) いずれの供試菌もpH2.5では殆んど増殖することができず, 急速に死滅していく。pH3.5では増殖はするが, 死滅もかなり速く進行し, 例えば泡盛1号酵母では保存日数10日目で約60%が, 17日目で100%がメチレンブルー染色された。pH5.0ではpH3.5のように急速に染色されることはなかった。 (4) いずれの供試菌も培養液中の糖濃度が高くなる程, メチレンブルー染色率は小さくなり, 培養日数が長くなる程, 染色率は大きくなった。 (5) いずれの供試菌もアルコール分10%では増殖がかなり遅れ, アルコール分15%では増殖できなかった。またアルコール分5%では泡盛1号酵母は他の酵母よりも若干早く増殖し, かつ全酵母数も多かった。 (6) 泡盛1号酵母は約3℃ で保存することが望ましく, 試験結果を総合的に判断して, 麹エキス培養液中での泡盛1号酵母は3℃ 前後の保存条件ならば, 5日位は保存できると考えられる。