純米清酒及び普通酒 (糖・アルコール使用酒) について, 原酒と割水酒問の官能値を比較し, 次の結果を得た。 1.純米清酒 (試料数 n =24) について, 原酒とアルコール分15.0%まで割水した清酒間の官能値を比較した結果, 総合品質 ( r =0.882), きれいさ ( r =0.714) 及び甘辛 ( r =0.732) の項目に高度に有意な相関関係が得られた。一方, 味の濃淡 ( r =0.345) については, 有意な相関関係は得られなかった。 2.普通酒 (試料数 n =17) について, 原酒とアルコール分16.0%まで割水した清酒について同様に比較した結果, 総合品質 ( r =0.608) 及び甘辛 ( r =0.498) の項目に有意な相関関係が得られたが, 味の濃淡 ( r 篇0.408) 及びきれいさ ( r =0.430) については有意な相関関係は得られなかった。 3.味の濃淡については, 原酒率 (原酒量/蒸留水量) を5.45以下とそれを越えるものに分けた場合, 5.45以下のグループは, 純米清酒 ( r =0.516n=17), 普通酒 ( r =0.580, n=16) ともに, 原酒と割水酒問で有意な相関関係が得られた。 一方, 純米清酒で原酒率5.45を越えるグループでは, 原酒と割水酒間で負の有意な相関関係 ( r =-0.848, n=7) が得られた。 4.純米清酒の原酒を一律 (原酒量: 蒸留水量=5: 1) に割水した場合は, 原酒と割水酒問の味二の濃淡には高度に有意な相関関係 ( r =0.815, n =17) が得られた。 5.純米清酒で, 割水によって味の濃さの失なわれない原酒の条件の一つは, 原酒でアルコール分が低圏 (16.5~17.5%程度) であること, 日本酒度が小さい, つまり甘口の酒であると推定された。