山梨県下のブドウ酒醸造場の産膜ブドウ酒の皮膜24点から, 30菌株の産膜性酵母を分離し, それらの菌学的諸性質から酵母属を同定すると共に, 実際の貯蔵管理面からブドウ酒における産膜性について検討した。 1.産膜ブドウ酒の新酒 (貯蔵6ヵ月以内) から分離された12菌株の酵母は4属に属し, それぞれ Sac-charomyces 5, Hansenzzla 3, Pichia 3及び Candida 1菌株であり, 古酒 (貯蔵6カ月以上) から分離された18菌株のうち, 16菌株がSaccharomyces属で, その外 Hansenula 及び Pichia 各属のそれぞれ1菌株だけで, 前者の酵母相とは顕著に相違した。 2.分離された Saccharomyce 3属酵母の産膜性についてみると, ほとんどの菌株で強いSO2及びエタノール耐性が認められ, 特に古酒から分離した菌株の産膜性は新酒のそれに比べて顕著に強い皮膜形成能を示した。 その他の属の酵母は, いずれも両耐性は著しく低かった。 3.胞子の形成が認められなかったF-15菌株は高いSO2及びエタノール耐性を示すことから Saccharomyces 属類縁の無胞子酵母であると推定され, 他のSacclzaronyces属菌株と同様キラー酵母による産膜防止が可能であると考えられる。 4.分離菌株の産膜性は白ブドウ酒 (甲州種) に比べ, 赤ブドウ酒 (Cabernet Sauvignon種) において顕著であり, この違いは産膜性を左右する未知因子の介在によるものと考えられる。