醸造というしくみは, 農作物を微生物の力をかりて, まったく別の形に変化させる食品加工法で, 人類の知恵の産物である。日本の醸造の原動力は, 麹菌である。麹菌産業は国民総生産の約1%を支えている。 本論文は, 清酒麹菌を用いて, プロトプラストの大量調整法にはじめて成功し, また, プロトプラストの再生という技術を確立した学問的背景をのべている。21世紀の産業といわれる遺伝子産業の分野に, 麹菌利用の突破口をひらいた論文といえる。