米・辛口味噌 (麹歩合6.0と8.2のもの2種) を仕込み, 20°から40°の範囲で品温経過の異なる試験区を設け, それらの醸酵熟成過程の遊離グルタミン酸, グルタミンおよびピログルタミン酸の消長を検討し, 次のような結果を得た。 1) 経過温度の低い区分は遊離グルタミン酸の遊離速度が遅く, グルタミンの減少速度およびピログルタミン酸の生成速度も遅かった。 これに対して経過温度が高くなるにしたがい遊離グルタミン酸の遊離速度およびグルタミンの減少速度とピログルタミン酸の生成速度が速くなった。また経過温度の高い区分では遊離グルタミン酸の遊離速度が速いが, 熟成後半は遊離グルタミン酸の量が減少の傾向を示した。 2) FNに対する遊離グルタミン酸 (窒素比) の量はすべての温度区で仕込初期には低いが, 時間の経過とともに増大しそれ以降熟成の全期間を通じてほぼ一定の傾向を示した。 3) 熟成に伴うグルタミン (m mole)/FN比とピログルタミン酸 (m mole)/FN比の間には高度に有意な負の相関が認められた。 4) log {(pyro/FN)/(Gln/FN)} の値は仕込当初は大きな負の値を示すが, 醸酵熟成が進み味噌らしい香り, 味, 色等が付き始めたときその値が-0.2~0を示し, ゼロを越えた正の領域で熟成が完了するものと考えられる。更にこの時のpH, 遊離グルタミン酸FNの値からも同様のことが推察される。