ブドウ酒酵母の生育に及ぼす銅特有の選択特性を利用して, 硫酸第二銅 (CS) 培地をブドウ酒の貯蔵中に出現する野生酵母の検出に適用できるかどうか, 各種の代表的なブドウ酒酵母95菌株を用いて検討すると共に, 実際の貯蔵管理面から, 山梨県内ワイナリー14場から採取した発酵終了後の新酒30点に本培地を適用して, 次の結果を得た。 1. 有用ブドウ酒酵母の保存株は, 供試39菌株のうち34株 (87%) がCS培地に適用できることを認めた。他方, 有害の代表的な野生酵母は19菌株のうち13株 (68%) はCS培地に生育を示して検出できるが, 他の6菌株 (32%) は検出できなかった。 2. ワイナリーから分離された産膜性酵母は, CS培地に30菌株のうち24株 (80%) 生育を示し, 高い検出能が認められ, そのうち真性の産膜酵母は9菌株のうち9株 (100%) 及び仮性の産膜酵母は21菌株のうち15株 (71%) であった。 3. 1シャーレー当たり有用ブドウ酒酵母 (OC-2, W-3) 107レベルの高酵母密度の中に混在する低酵母密度200個前後の有害な各野生酵母23菌株に示された回収率は, ほとんどの供試株で高く90~110%であった。 4. 山梨県内ワイナリー14場から採取した5品種30点の新酒にCS培地を利用して見出された汚染ブドゥ酒の割合は, 白ブドウ酒14点中5点 (35%) に対較して, 赤ブドウ酒は16点中13点 (81%) で顕著に高い頻度を示し, それらのうち全酵母に対する野生酵母の占める平均汚染率も赤ブドウ酒 (18.9%) は, 白ブドウ酒 (0.55%) に比較して著しく高い割合を示した。 5. CS培地に出現した18試料の野生酵母コロニーの中から, 50コロニーを無作為に選び, その Sacch . 属及び産膜性の有無を調べた結果, Non- Sacch . 属酵母は9試料に, Sacch 属酵母は17試料に見出され, 前者に比べて後者の方が圧倒的に優勢で, それらのほとんどに仮性の産膜酵母が多く見出される割合は顕著に高かった。