1. 米麹の溶解性を評価する上で, 次の2点がその特徴として挙げられた。 (1) 米麹中に比較的すみやかに外部の浸出液中へ溶解する可溶性区分が存在し, 通常の出麹時には麹乾物重量の30~40%を占めた。 (2) それ以外の部分は蒸米に比べて消化されにくい状態となっており, 30~40℃という製麹条件下でかなりの老化の進行が認められた。 2. 米麹の溶解性を考えた場合, 可溶性区分の増加及び被消化性の向上の2点に麹菌の蒸米での増殖即ち破精込みの意義が見い出された。 3. 蒸米水分, 精米歩合, 使用米品種等の各製麹条件下においては, 米麹の被消化性の差は蒸米そのものの性質由来のものであった。 4. 酒造好適米である山田錦より調製された米麹は可溶性区分, 被消化性等の溶解性において良好な結果が得られた。また同一品種, 同一ロットの白米中に心白を有する心白粒についても同様の結果が得られた。終わりに本研究に関し, 貴重な菌株を分与下さり御指導賜わりました関東信越国税局田中利雄鑑定官室長, 並びに本稿の御校閲を頂きました国税庁醸造試験所第4研究室熊谷知栄子博士に深謝致します。また発表を許可下さいました菊正宗酒造株式会社嘉納毅六社長, 森太郎顧問に感謝致します。