出麹の水分含量の違いで, 清酒の香気成分に相違のあることが推察されたので, 出麹した後減圧乾燥法およびアルコール脱水法で水分を調整後, もろみを仕込んで比較検討を行った。 1. 水分調整後の麹の糖化酵素および蛋白質分解酵素の力価には大ぎな違いはなかったが, もろみの前段の状貌は水分の多いものほど米粒の溶解が速く, 前急型で最高温度もやや高目に経過し, 水分が少なくなるにつれてこの傾向は逆になった。 2. もろみでの香気は官能的に見て, 麹の水分含量の少いものほど高く感じられたが, ガスクロマトグラフィ-の結果でも同様の傾向を示し, 水分の少い麹の方が低沸点から高沸点にかけて高級アルコール類, エステル類とも香気成分の値が高かった。 3. もろみの酵素力価は水分の多いものほど, もろみの中期から極端に低下する反面, 水分の低いものはもろみの末期まで酵素力価は高く持続し, 酵母のエステラーゼ活性とともに香気成分の生成に関与しているものと推察した。