すべての生命体或いはその細胞は, 生命現象を営むために, 非常に多くの酵素を持っている。それにもかかわらず, 麹菌が酵素の宝庫といわれるのは, (1) 麹菌が昔から日本の醸造工業を特徴づける中心的な微生物であり, 身近かな存在で, 取り扱いにも慣れていること, (2) 麹菌の細胞膜が, 真核生物の中でも特異的で, それを通って菌体内高分子タンパク質 (酵素を含む) の一部が容易に菌体外に排出されること, 等の理由によるものである。 本稿は, この麹菌が生産する酵素について前号に引き続いて詳細に解説していただいた。これらの知見は, 今後のバイオサイエンスの進展の基盤ともなると考える。