固定化タンニンはすでに醸造用水の除鉄用として酒造業界で広く利用されている。 固定化タンニンによる醸造用水の除鉄において, 通常の処理条件 (SV=100hr-) では除去しにくい醸造用水があることがわかり, その原因について検討を行った。また, 固定化タンニンによる水道水の除鉄条件についても検討を行った。その結果, 通常の処理条件では, 除鉄できない醸造用水でも低流速 (SV=20hr-1) で処理すれば充分に除鉄できることがわかった。その結果および処理後の固定化タンニンからの塩酸による溶離液の成分分析の結果, あるいは鉄定量時の発色試薬と鉄との反応時間の遅延などから, 本醸造用水中では鉄は硅酸と複合体を形成し, コロイド状で存在すると考えられる知見を得た。また, 固定化タンニンはこれまでの方法では効果的に除鉄できなかった水道中の微粒子状の鉄でも通常の処理条件で容易に除鉄できることがわかった。 したがって, 固定化タンニンはイオン状, キレート状の水溶性の鉄以外にもコロイド状あるいは微粒子状の鉄も除去できるので, あらゆる形態の鉄を含む各種の醸造用水の除鉄に効果的に利用できるものと思われる。