唾液を指標として, エタノール摂取前に食物や飲料を摂取した場合の, 体内エタノール濃度の推移を測定した。また同一エタノール濃度のエタノール水溶液と清酒を飲んだ場合の, 体内エタノール濃度の推移も測定した。 エタノール摂取前にオレンジジュース, 牛乳, 無脂肪乳, グルコース, フルクトース, スキムミルクならびに大豆プロテインパウダーを摂取すると, 唾液エタノール濃度のピークの出現が遅れ, ピークの高さが低くなった。これは, これらの飲料ならびに食品に含まれる, 胃滞留しやすい糖やタンパク質などの成分が, エタノールの胃排出を遅らせるためであると考えられた。胃滞留しやすい成分を含まない緑茶では, 唾液エタノール濃度の推移に変化は見られなかった。バターを摂取しても, 顕著な効果は認められなかったが, これは水相が先に胃排出されているためだと推察された。 同一エタノール濃度のエタノール水溶液あるいは清酒を摂取し, 唾液エタノール濃度の推移を見たところ, 両者に違いは見られなかった。しかし分割摂取した場合には, エタノール吸収過程では, 清酒を飲んだ時のほうが, 唾液エタノール濃度が低く推移することがわかった。 なお本報告の内容の一部は, 平成17年度日本醸造学会大会において発表した。