日本においては, 炊飯前に米を水に浸けることが習慣となっている。これにより米粒の中に水が浸透し, 加熱されたときに米粒の中心までデンプンが充分に糊化して米がふっくら炊きあがる。弥生時代の昔から米を栽培し, 米食に親しんできた日本人のやり方である。日本酒の醸造においても, 麹菌を生育させる米は, 蒸す前に水に浸す。浸漬時の米粒内への水の浸透とその結果である粒内水分分布は, 炊飯後, 加工後の米やその加工品の品質を決定する重要な要因である。そこで, 水の分布を画像化できる磁気共鳴画像法 (magneticresonanceimaging, MRI) を用いて, 浸漬過程における米粒中の水分分布変化を追ってみたところ, 水の浸透経路や水分分布は, 米の胚乳のデンプン細胞の粗密や並び方を反映し, 炊飯用の品種コシヒカリと, 酒米用の品種山田錦とでは, 水の浸透パターンが異なっていた。このことから, MRIにより米粒内への水の浸透を観察することで, その米の加工適性の一面を評価できるのではないかと期待される。