清酒酵母の高香気生産性変異株は低温発酵性に劣る傾向があり, 大吟醸酒の醸造のように低温で長期間発酵を行なう際に問題になることがある。著者らはこの点を改善するために, 親株として低温での増殖性及び発酵性に優れた菌株を分離し, それに高香気生産性変異を付与することにより, 香気生産性が高く, かつ低温で発酵性が劣らない酵母の育種に成功した。その親株の分離源として, 平板培養状態で冷蔵庫に8年間保存した後に生き残った酵母群を採用した著者らの手法はユニークであり, 大変興味深い。