(1)醸造酵母問におけるmelezitose資化能の相違について,分子生物学的にアプローチし,解明を試みた。清酒酵母以外の醸造酵母のmaltose,melezitose資化の際に発現する遺伝子は共に同様のパターンを示し,主にAGT7,MALx1,MALx2,MAL13であった。 (2)清酒酵母はmaltose資化する際,AGT1,MALx2は発現していたが,MAL13の発現が乏しかった。(3)melezitose資化能の強い株は,AGT1,MAL13をVII番染色体だけでなく,III番染色体上にも有していた。 (4)清酒酵母のMALx1相同配列は,清酒酵母以外の醸造酵母に比べ,明らかに少なかった。 (5)100年以上前に分離された清酒酵母のMAL13と隣接しているtransporter geneはAGT1ではなく,MALx1であった。 (6)100年以上前に分離された清酒酵母のMAL13塩基配列,アミノ酸配列をその他の供試菌株と比較すると,その相同性は大きく異なった。