1.協会9号酵母 (K-9) と協会10号酵母 (K-10) の香気成分生成能に関する性質を比較するため, これらの酵母を用いて製造された鑑評会出品酒の一般分析及び香気成分の分析を行った。その結果, 酸度, n-プロパノール, i -ブタノール, 酢酸イソアミル, i -アミルアルコール, A/B, A/P, P/B等に有意差があった。また, これらの値を用いて主成分分析を行ったところ, 第1主成分に n -プロパノール, 第2主成分にエステル, 第3主成分にi-アミルアルコール, 第4主成分に酸度, 第5主成分にアルコール分をそれぞれ主とする成分が抽出された。 2.1の結果を, 2種類の小仕込試験 (70%精白の凍結保存麹とα米を用いた試験1と, 50%精白の凍結保存麹と山田錦を用いた試験2) により確認した。特に, 高級アルコールの比についてはK-9とK-10との間に大きな差があり, しかもそれぞれが一定の範囲にあることから, この差を利用すればK-9とK-10の区別が可能である。 最後に, 実験について種々の御指導頂きました国税庁醸造試験所岡崎直人主任研究員と, 麹と米を提供して頂きました清酒製造場の皆様に深く感謝します。