我々は, 種々の市販清酒に対する Zoogloea ウレアーゼの尿素除去効果を調べた。尿素除去量はかなりばらついており, 一部の試料には, Zoogloea ウレアーゼの阻害物質が含まれていることが示唆された。 そこで, Zoogloea ウレアーゼに対する阻害が著しい清酒について, 阻害物質の性質とその由来について検討した。分子量1万で分画する分子ふるい膜によるろ液では, 阻害の減少は見られなかった。阻害物質は負に荷電しており, 阻害は可逆性を有していた。清酒に含まれる有機酸による阻害は認められなかった。無機化合物の試験によって, 清酒中に含まれる Zloogloea ウレアーゼの主要な阻害物質はフッ素イオンであることがわかった。清酒中のフッ素イオン濃度と阻害の程度はよく一致した。50%阻害のフッ素イオン濃度は0.1ppmであった。 清酒中のフッ素イオン濃度と仕込水のフッ素イオン濃度の相関から, 清酒中のフッ素イオンは仕込水に由来することがわかった。フッ素イオンは, イオン交換あるいはアルミナ処理により効果的に除去された。フッ素イナン除去水により製造された清酒は, Zoogloea ウレアーゼを用いた処理に対してほとんど阻害を示さなかった。