A.sojae No.9株とA.oryzaeS-03株の種麹(いずれも(株)樋口松之助商店製)を使用して, 9工場による醤油の比較試験を行ったところ,A.sojaeNo.9を使用した場合はA.oryzaeS-03使用に比べ, 次の特徴が認められた。 1. 麹は水分が多く, pHが高く, また酵素活性はプロテアーゼ(pH5.7), 飴アミラーゼ,酸性カルボキシペプチダーゼが低く, グルタミナーゼ, エンド・ポリガラクチュロナーゼが高かった。 2.熟成60日の諸味液汁は色が淡く, pHが低く, アルコールが少なかった。 3.熟成180日の諸味液汁(生醤油)は色が淡く, 全窒素,ホルモール窒素が少なく, 蛋白分解率(FN/TN×100)が低く,還元糖が多く,火入逅が少なかった。有機酸は乳酸,酢酸が多く, コハク酸, ピログルタミン酸が少なかった。遊離アミノ酸はグルタミン酸のみ多く, その他はいずれも少ない傾向であった。 4。官能的には約90%のパネルが両者を識別でき, そのうち約60%のパネルがA.sojaeNo.9の生醤油及び火入醤油を好んだ。 終りにのぞみ,A.sojaeNo.9株とA.oryzaeS-03株の種麹をご提供いただいた(株)樋口松之助商店に深謝致します。なお, 本報告の要旨は(社)日本食品工業学会第35回大会(1988年3月, 東京)にて発表した。