新規焼酎麹菌の開発を目的として, まず高生酸性麹菌の造成を検討した。当社保存菌株 Aspergillus saitoi 34株より蒸米上での生育の良いP-11株を選択し, さらに紫外線照射より変異処理を行った。得られた白色変異株198株より, 米麹麦麹の両方で生酸性の良いP-11-54株を選択した。この株は40時間培養において, A.kawachi に比べ米麹で1.5倍, 麦麹で約2倍の生酸性を示した。蒸米, 蒸麦を基質とした場合P-11-54株は親株に比べ増殖性が良く, 酵素活性の中でACPaseが増加し, GAase, APaseは低下していた。しかし, 実際の仕込みにおいてアルコール取得量に影響は認められなかった。変異株は親株に比べ分生子柄の長さが短くなっており, 機械製麹には有利と考えられた。以上の結果より, 今回得られたP-11-54株は焼酎醸造に十分使用できる菌株であると考えられた。 本研究当たり, 焼酎醸造試験に協力いただいた小正醸造有限会社に深謝致します。 本研究は昭和62年度日本発酵工学会年次大会において口演したものに一部訂正, 加筆を加えたものである。