(1) ブボッド中の生菌数は, 酵母および生酸菌の106/g, 108/gに比ベカビは生菌数が少なく105/gであった。 (2) ブボッドおよびタブイよりカビ36株, 生酸菌62株, 酵母100株を純化取得した。 分離したカビの中で, でん粉を糖化することができるものは Rhizopus だけであった。しかし Rhizopus の分離されないブボッドもあり, またでん粉を糖化する力が非常に弱かったことから, タブイ醸造における主糖化菌とは言い難い。 (3) これに対し糖化力を持っていた主な微生物は, Saccheomycopusis 属で, すべてのブボッドより常に分離された。 以上のことから酵母である Saccharomycopsis 属こそが, 東南アジア地域とくにフィリピンの米酒における糖化の主要な微生物であった。 (4) CARMETTE以来アジアの酒醸造における主糖化菌は, Mucoralesが行うと定説化されてきた。しかし供試したブボッドのすべてにその存在が確認されているのではないこと, また分離したカビの糖化力も弱かったことから, フィリピン米酒の主糖化菌は Saccharomycopsisfibuligera であり, Saccharomyces cerevisiae が主な発酵菌として関与していることを知った。 (5) すなわち, 少なくともフィリピン北部山岳地帯で造られる米酒は, 上記2属の酵母のみで米の糖化も, 酵におけるアルコール発酵も一つの相の中での並行複発酵により醸造されることを明らかにした。