焼酎白麹菌Aspergillus kawachii IFO 4308を使用した清酒醸造を実施し, 次の知見を得た。 1. 清酒醸造において乳酸の代わりに白麹に含まれるクエン酸の抗菌力を利用した清酒醸造の可能性が示唆された。 2. 白麹のα-アミラーゼ力価は黄麹菌の1/16であったにもかかわらず, 発酵に支障を及ぼすことなくもろみの溶解は進行した。この理由としてAspergillus kawachii由来のα-アミラーゼはもろみ中で蒸米に無効吸着されにくい・ことが考えられた。 3. 対照として実施した黄麹仕込が糖化優先型の並行複発酵であったのに対し, 白麹を使用した場合は全般的に糖化と発酵がパラレルに進行した。 4. 白麹仕込で得られた清酒はクエン酸のさわやかな酸味を呈するとともに, 黄麹仕込で得られた清酒と比べて遊離アミノ酸がやや少なく, またペプチドを構成するアミノ酸数はやや多い傾向にあった。