糖化酵素を用いた無蒸煮発酵法により米焼酎の製造を検討した。得られた結果を要約すると次のとおりである。 1. 市販酵素剤を選択するためにグルコアミラーゼ活性を測定したが, 使用する基質 (デンプン質原料) により活性が大きく変わった。 2. 汲水にクエン酸を0.2%(w/v) になるように加えることにより無蒸煮発酵が可能となった。 3. 小仕込試験により市販酵素剤の評価を行ったが, 100g破砕米に対してタンパク質として0.1g以上になるように酵素剤を添加すると発酵速度に大差なく, 9日間で発酵は終了した。しかし, タンパク質として0.05gしか添加しないときは発酵速度に差が見られた。発酵速度の経日変化を調べたところ, 発酵開始時に発酵速度の早いタイプと, 発酵後期においても発酵速度がある程度持続するタイプに大別された。前者の特徴は, α-アミラーゼ活性が他の酵素剤に比べて高かった。 4. 選択した酵素剤A及びEを用いて小仕込試験を行った。両者とも発酵歩合は約94%であったが, 蒸留して得られた製品中の高沸点香味成分であるリノール酸エチル及びオレイン酸エチルに差がみられ, 酵素剤Aを使用したときの方が高かった。これは, 酵素剤Aに含まれるリパーゼ活性が酵素剤Eに比べ15倍も高かったためであると考えられる。 5. 酵素剤Aを用いて原料米を蒸煮する効果について検討した。開始時の発酵速度は向上するが発酵に要する日数は9日間と変わらず, また生成されるエタノール濃度も143g/lと変わらなかった。 6. 発酵醪及び製品の香味成分の比較を行った。無蒸煮の方が, 蒸煮に比べ香味成分に富んでおり, 従来法で得られたものに近かった。しかし, 香味成分で最も重要となる酢酸イソアミル5、4mg/ l と従来法の7.9mg/ l に比べて低かった。また, 高級脂肪酸エチルも約1/2と低かった。