Z. rouxi iのミトコンドリアATPaseと細胞膜ATPaseの性質を明らかにするとともに, これらの耐塩性への関与について検討した。 1.本酵母の細胞膜ATPaseの最適pHは6.5, ATPに対する Km 値は0.7mMであり, ミトコンドリァATPaseの場合は, pH8.5と3.3mMであった。また, 酵素的諸性質は無塩培地, 含塩培地のどちらで培養しても変わらなかった。 2. 培地への10%の食塩添加により, 細胞膜ATPase活性は約2倍に, ミトコンドリアATPaseは約6倍に上昇した。また, グリセロール, エタノールを炭素源とした時, 両ATPase活性がともに上昇し, S.cerevisiaeの両ATPaseの挙動とは異なっていた。 3. 無塩培地で培養した細胞を, 食塩10%の培地に移した時, ミトコンドリアATPase活性が大きく増加する前に増殖が開始された。 4. 無塩培地で培養した細胞を, 各種濃度の食塩溶液に移したとぎ, 菌体内ATPレベルが, 1分以内に, 食塩濃度の上昇に応じて高くなり, H+排出量も増加した。